アリの世界は人間社会の縮図

アリの世界は人間社会の縮図

「社会性昆虫」という言葉をご存知だろうか。アリやハチなどの社会性昆虫は自分たちの巣の存続のために集団で生活しその中で仕事を分担している。その様子はまるで人間社会の縮図であり、家族で一つの巣(社会)を作る点を除けばほぼ人間社会と同じと言っても過言ではない。

新たな巣の誕生

通常アリの巣は一匹の女王アリとその子供である働きアリで構成される。働きアリはすべてメスであり、繁殖能力を持たない。ある程度個体数の多い、成熟した巣では次世代の女王とオスが生まれる。新女王とオスは羽を持っており、同種の他の巣の羽アリと同じタイミングで一斉に飛び立つ。オスの羽アリは、別の巣から飛び立った新女王と後尾をしたらすぐに死ぬ。一方後尾を済ませた新女王は、自分の羽を落とし、安全な場所に卵を産む。

孤独な女王

この段階ではまだ働きアリが生まれていないため、最初に産んだ卵は女王自ら世話をする。生まれた幼虫には女王が口渡しで栄養を与える。このとき外から餌を取ってくることはなく、自身が飛行のために使った栄養などを幼虫に与える。この期間は女王単独で巣を守らなければならないため、最も外敵に襲われやすい時期である。

この時期の巣を観察してみると、女王アリが必死に卵を世話する姿からは愛情を持って我が子を育てる母親のような印象を受ける。

働きアリの誕生

最初に産んだ幼虫は羽化すると働きアリとなる。働きアリは女王に代わって巣の増築や餌の調達、そして女王アリが産んだ新たな卵・幼虫の世話をする。これ以降女王が卵の世話をすることはなく、ただひたすらに働きアリを生産するマシーンのように卵を産み続ける。それまでは懸命に子育てをしていた女王が、それ以降生まれてくる子の世話を働きアリに任せる様子はどこか寂しさもある。

巣の繁栄

 ある程度働きアリの個体数が増えると、仕事の分担も明確になってくる。巣の中で子育てをする個体や外に餌の調達に出かける個体、そして外敵や他の巣のありと戦う個体もいる。またヨコズナアリなど一部の種では働きアリよりも体が大きく顎も発達した兵隊アリが生まれる。兵隊アリの役目は働きアリには大きする餌を噛み砕いたりすることであり、名前から想像するような外敵と戦う専門部隊というわけではないが、体格を活かした分担が行われている点は面白い。またさらに興味深いことに、アリをはじめとする社会性昆虫は年老いた個体ほど巣の外での仕事が増える。年をとるほど昇進し、足を使った仕事が減る人間とは正反対である。これは、リスクの大きい仕事を老いた個体が担当することで、若い労働力を効率的に維持することが目的だと考えられており、巣の存続のために理にかなった分担である。

 このようにアリの生態は人間社会との共通点が多数ある。新女王を捕まえれば自宅で簡単にアリの巣ができていく様子を観察できるので、今年の春は道端を歩く羽アリを見つけてみよう。新生活への期待と不安を背負って卵を産む場所を探す新女王アリの姿が見られるはずだ。

雑記カテゴリの最新記事